BLOG 『広報誌づくりの困った!を解決』

社会全体のコンプライアンス意識は年々高まっており、限定的な範囲に配布することが前提である病院広報誌であっても、著作物を著作者の許可なく掲載することは病院の信頼失墜につながりかねません。

今回は病院広報誌制作において、著作権のほか、肖像権などについてのよくある疑問点についてお答えいたします。

 

 

Q. 医師に原稿執筆を依頼したら、手術の様子を図解したイラストが添付されていました。A病院のサイトで掲載されているもののようですが、そのまま広報誌に掲載してもよいでしょうか?

 

A.

他院のホームページに掲載されている写真やイラストについては、高確率でホームページ制作会社などで制作した著作物となります。仮に掲載元の病院に転載について問い合わせても、基本的には転載不可でことが多いでしょう。ただし、該当する画像が厚労省などの公的機関が発行する媒体からイラストを転載している場合、画像の権利元を調べて掲載許諾を申請することができます。画像の権利元がどこにあるのか調べてみることから始めてみましょう。

 

Q. 医師の講演の様子を写真に撮りました。複数人の参加者の顔が写っていますが、小さいので広報誌に掲載しても問題ないでしょうか?

 

A.

著作権とは別の問題として、顔や姿態をみだりに「撮影」や「公表」などされない権利「肖像権」に抵触する可能性があります。撮影の場に患者様や地域住民の方がいらっしゃる場合は「会場の様子は撮影し、広報誌に掲載いたしますので、撮影されたくない方はお知らせください」と伝えるなどの配慮が必要となります。肖像権に抵触するかどうかの判断基準のひとつとして「被写体が特定できる写真」であるかどうかというものがあります。スーツでの後ろ姿や、背景の一部として人物へのピントのあっていない(顔が識別できない)写真は掲載しても問題ありませんが、個人として識別できる可能性がある場合は加工して掲載しましょう。

 

Q. 当院オリジナルキャラクターをイラストが得意なスタッフに作成してもらおうと考えています。企画や季節に合わせて服装を変えたいのですが、加工する場合もイラストを描いたスタッフに許可をもらう必要がありますか?

 

A.

自院スタッフが職務として制作したキャラクターは、職務著作として法人などがその著作物の著作者として認められますが、職務著作として認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 法人その他使用者(法人等)の発意に基づき
2. その法人等の業務に従事する者が
3. 職務上作成する著作物で、
4. その法人等が自己の著作の名義のもとに公表し、
5. その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない

上記の条件を満たし、職務著作となるため加工について該当スタッフに許可をとる必要はありません。

「業務時間外に自宅で描いてもらった」という場合は職務著作にはならないため、さまざまな形で展開することを想定している自院のキャラクターであれば業務として描いてもらった方が後々の心配も少なくてすみます。

 

Q.職員のスナップショットに有名漫画に登場するキャラクターが映りこんでいました。この場合、広報誌に掲載しても問題ないでしょうか?

 

A.

あくまでも被写体は職員が主であり、背景などに著作物が写り込んでしまった場合は、その著作者の許諾を得る必要はありません。ただし、意図的にキャラクターを映しているような場合は、著作権に抵触する恐れがあります。被写体としての主・従を判断基準として精査しましょう。

 

著作権は著作者の権利を守るためにありますが、決して表現の幅を狭めるものではありません。しっかり遵守し、適切な著作物の取り扱いを行うことでむしろ表現としての可能性を広げることができます。適切な著作権の取り扱いを心がけましょう。