BLOG 『広報誌づくりの困った!を解決』

病院広報誌は、病院内の活動や情報を通院する患者さんに向けて発信することで、普段の診察や治療ではなかなか伝わりにくい病院の魅力を知ってもらい、愛着を感じてもらうことを目的に発行するケースが一般的です。しかし、ターゲットや発行の目的、掲載コンテンツや配布方法においては「広告」とみなされる場合があります。

広告とみなされた場合は「医療広告ガイドライン」に則った誌面作りが不可欠となります。今回は医療広告ガイドラインの注意点について解説します。

 

 

■医療広告ガイドラインとは

医療行為は極めて専門性が高く、命に関わる場合があります。患者さんが不当な医療広告により誘引され、不適当なサービスを受けることになり大きな被害を負うこともありえます。そこで厚生労働省は、患者さんが広告内容を適切に理解し、治療方法を選択できるよう、客観的で正確な情報を提供するための「医療広告ガイドライン」を制定しています。

違反が発覚すると医療機関へ行政指導が入ります。是正されずに罰則が適用された場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。なにより事例が公表される場合があるため、信頼度へのダメージは計り知れません。違反とならないよう十分な注意が必要です。

 

 

■病院広報誌が医療広告とみなされるライン

医療広告は、次の2つの条件を両方満たすものをいいます。

 

❶患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

❷医療機関や医師の名称が特定可能であること(特定性)

 

発行のターゲットが通院する患者であり、目的がコミュニケーションや情報提供の場合は院内での配布となるかと思いますので、ガイドライン規制の対象とはなりません。しかし、発行のターゲットに地域住民を含んでおり、その目的が集患である場合は、地元のショッピングセンターやグループ施設内のラックに配置するなど、院外での配布が加わります。その場合は情報の受け手がすでに受診した患者さんに限定されないため、広報物ではなく医療広告とみなされ「医療広告ガイドライン」に則った誌面作りが必要となります。

ターゲットや目的、そして配布方法によって広報物が医療広告とみなされるため注意してください。

 

 

■ポジティブリスト・ネガティブリストを順守しよう

医療広告ガイドラインでは、広告できる事項をまとめた「ポジティブリスト方式」と広告できない事項をまとめた「ネガティブリスト方式」という2つの方式で広告内容を規制しています。ポジティブリストは医療法により厳しく制限されているため、規制の範囲内で記載できる事項は各医療機関に関する基本的な情報(医療機関名や診療科目、診療日時など)のみとなっています。

もう一方のネガティブリストによる規制内容としては、大きく以下の8項目がありますので、違反しないように改めて確認しておくことをおすすめします。

 

❶未承認の医薬品や医療機器を用いた治療

❷虚偽広告(「最先端の医療」「最適な医療」など)

❸比較優良広告(「地域No.1のスタッフが在籍します」「芸能人の○○さんも当院で治療しています」など)

❹誇大広告(「○○センター」は地域における医療機関として中核的な機能を果たしている場合でないと表現できない)

❺患者の主観に基づく、治療等の体験談

❻治療前と治療後の写真

❼公序良俗に反する広告(わいせつ性、残虐性のあるもの、差別を助長するもの)

❽品位を損なう広告(「今だけ限定80%オフ」「治療を受けた方全員に○○○をプレゼント」など)

 

 

■希望者への個別配布は広告。ただし禁止事項が一部解除に

「来院されたことのない患者さんから問い合わせを受けたときに、病院案内と一緒に広報誌を郵送したい」という場合もあるでしょう。その場合の広報誌は「広告」ではあるものの患者自ら求めて入手する情報であるため「広告可能事項の限定解除」に当たり、ポジティブリスト以外の事項も広告してもよいとされます(自由診療について記載している場合は内容や費用リスクや副作用を記載することが必要)。

さらにネガティブリストの❶未承認の医薬品や医療機器を用いた治療、❻治療前と治療後の写真の掲載は不可とはなりません。ただし、❶は薬や医療機器の安全性などについて、❻はそれぞれの写真についての解説などをしっかりと明記することが必要です。

「この表現は掲載できるか分からない」といった場合は、厚生労働省のホームページ「医療広告ガイドラインに関するQ&A」を参考にしてみてください。他にも地域の保健所に問い合わせて確認することもできます。

 

 

限定解除に当たるからといって、どんなことも自由に掲載できるということはありません。ガイドラインのネガティブリストを順守することが重要です。

また「院内で配布する広報物だからガイドラインを重視しなくても問題にならない」という判断もリスクがあります。ガイドラインは患者さんが不適当な医療サービスを受けないようにするためのもの。広報誌の制作においてもガイドラインをしっかり理解した上で制作することが望まれます。