昨今、高度な医療を提供する大病院と、日常的な診察を行うかかりつけ医の機能分化が一層重要になっています。「紹介状なく外来に受診する患者さんの影響で、待ち時間が増加している」「医師の外来対応の負担が増えている」「紹介・逆紹介率の基準値をクリアしなくてはならないが、思うように数字が伸びない」。中核病院や一般病院の多くは、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
これらの解決には「かかりつけ医制度」の利用をしっかりと推進する必要があります。かかりつけ医の必要性が広く周知されれば、病院にとっても治療の優先度の高い患者さんに集中しやすくなるというメリットがあります。
今回は、患者さんがかかりつけ医をもつことにつながる企画のアイデアをご紹介します。
健康だけじゃない! お金も時間も守る「かかりつけ医」のススメ
患者さんがかかりつけ医をもたない理由として「あまり病気にかからないので必要ないから」と答えている人が最も多いという調査結果がありました。そういった方々には「健康面のメリットから大きいから」という理由だけでは、かかりつけ医の必要性を感じてもらうことは困難です。
その場合、健康に関する面だけではなく、お金や時間といった面でもメリットがあることを強く訴える方がいいでしょう。
(例)
・[お金]一定以上の規模の病院では、紹介状をもたず受診すると「選定療養費」がかかり、支払いが高額になる
→かかりつけ医に紹介状を書いてもらうことで「選定療養費」を支払う必要がなくなる
・[お金]同じ症状で地域の複数のクリニックを受診する、いわゆる「はしご受診」では、毎回初診料がかかり割高になる
→かかりつけ医なら、2回目以降の受診は再診料扱いとなり、料金が下がる
・[時間]複数のクリニックに通院していると、医師の間で情報共有が不十分になり、重複した検査や治療が行われる懸念がある
→かかりつけ医がいれば自分の情報を一括で管理でき、効率的に治療を受けられる
「連携クリニック紹介」に、親しみを感じられる工夫を
地域医療支援病院では、広報誌などで地域の連携クリニックを紹介している場合があります。
クリニックの紹介は、地域医療連携体制のアピールとともに「かかりつけ医」を推奨するためにも重要なコーナーです。基本情報などに加えて、クリニックに親しみを感じてもらうために、ひと工夫して見ることをご提案します。
たとえば院長に自院についての紹介コメントを書いていただく場合、病院を紹介する内容に加えて「休日の過ごし方」や「最近のお気に入りの曲」など、少しだけ院長や医師らのプライベートな内容を入れていただけるようお願いしてみてはどうでしょうか。それが難しいようなら、質問事項を作成しておき、それに回答していただくスタイルにしてみましょう。
もしくは、どんな時に頼りにしてほしいかなど、より安心感につながるメッセージを書いてもらうのも一案です。
院長や医師の親しみやすい人柄が事前にわかることで、大病院志向の患者さんにも、地域のクリニックを受診してみようかなという気持ちになっていただけるかもしれません。
広報担当者様が想像する以上に、地域医療連携の概念を理解していない患者さんは多いと思われます。自院のためにも広報誌を通じて、患者さんの「かかりつけ医をもとう」という気持ちを積極的にサポートしていきましょう!